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2015-02-04

検証現場『TBSアナウンス部』【前編】

Diamond.jp X 月刊 人才教育 [中原淳の学びは現場にあり!]
第1回】 2015年2月4日   中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授]
後篇
「耳」を養う研修、台本にない「何か」を探る現場
テレビの中で育つアナウンサーの学び  ⇒検証現場『TBSアナウンス部』【前編】
[構成]井上佐保子 [写真] 眞嶋和隆 ※2014年5月27日取材
報道局の一角で、13時過ぎから番組の打ち合わせ開始。全体の進行確認だけでなく、各コーナーの担当ディレクターが代わる代わる打ち合わせテーブルに訪れて、その日の特集やニュースについて、キャスターたちに説明をする。質問や意見が次々と繰り出され、活気溢れる現場だ。

テレビやラジオで活躍するアナウンサー。フリーのアナウンサーも増えていますが、ほとんどは就職活動を経てテレビ局に入社した社員アナウンサー、“局アナ”です。的確にニュースを伝えたり、臨場感溢れる実況を行ったり、個性を発揮して番組を盛り上げたり…と、テレビ、ラジオ番組に欠かせない存在であるアナウンサーたちはどのように育っているのでしょうか。
  • ICレコーダで育む「自分の声に気づく力」
「ウクライナの大統領選挙から一夜明けた26日、東部ドネツクの空港を包囲していた親ロシア派の武装集団に向け、ウクライナ軍が空爆に踏み切りました…」
 東京・赤坂のTBS本社11階にあるアナウンス部の会議室では、研修中のアナウンサー笹川友里さんが練習用のニュース原稿を読む声が響き渡っています。
 笹川さんは1年目に制作職を務め、2年目にアナウンス部に社内異動となったアナウンサー。一緒にICレコーダで録音した声を聞き、「どこが気になった?」と、尋ねるのは指導役の清水大輔アナウンサーです。
「親ロシア派の『親』の部分が少し強かったように思います」「そうですね、他には?」清水さんは再度、録音した音声を流します。原稿を読み、録音した音声を聞いて、発音や発声、アクセントで気になる部分を修正してまた原稿を読む……。アナウンスの基礎を学ぶ研修は、こうした地道な訓練の繰り返しだといいます。
新人アナウンサーへの研修は約3カ月間。新入社員研修を終えた月から8月までです。その後、クッション期間の9月を経て、番組改編期の10月から本格的に番組のレギュラーに入る、という流れが一般的です」と話すのは清水さん。
 冒頭で紹介した笹川さん他、新人アナウンサーの研修を担当します。清水さんは、札幌テレビ放送を経て1993年にTBS入社。主に野球、サッカー他、さまざまなスポーツ中継などを担当するベテランです。
 3カ月間の研修中は、1コマ1時間半の授業を1日3コマ受講します。研修のプログラム、テキストは長年、改訂を重ねながらTBS のアナウンス部で受け継がれてきたオリジナルです。
 アナウンサーの研修は、まず腹式呼吸でお腹から声を出す練習から始まります。「演劇も歌も同じかと思いますが、浅い呼吸で発声すると、喉が開かず、いい声が出ません」。続いて、正しい口の形で正しく発音する練習をします。人によって癖があったり、間違った発音をしていたりするので、日本語の発音を一から学び直します。

[P2] 「最近はなぜか『さ、し、す、せ、そ』を、シャープに発音できない人が増えています。いずれにしても完璧な発音を身につけるには3カ月ではとても足りません」
 発音の仕方と同時に「促音、長音、鼻濁音」や「頭高型、中高型、尾高型、平板型」(アクセントの種類)など、日本語の音韻についての専門用語も学びます。
 研修では「『4月』は頭高ではなく、尾高で読んでください」といったやりとりをするので、アナウンス技術を伝えるために共通言語を持つ必要があるからです。その他、テキストには早口言葉のような滑舌を鍛える練習文なども載っています。
  • 誤りはすぐに指摘せず「自分で気づかせる」
自分で気づく「耳を養う」発声、発音の基礎を一通り学んだ後は、冒頭の笹川さんのように原稿を読んでは、録音した自分の声を聞き、修正する作業を繰り返します。
 この時、清水さんは、発音で気になるところがあっても、すぐに指摘せず、録音を聞かせて、自分自身で気づけるよう指導します。本人が気づかない場合も「この2行に1ヵ所あったけど、どこだと思う?」とヒントを伝え、辛抱強く待つのです。
 「すぐに答えを教えるのは簡単です。でもそれでは、自分で気づくことができなくなってしまいます。このやり方は少々じれったいのですが、繰り返すうち、聞き分ける精度が上がってきます」
 こうした「自分で気づかせる」指導方法はICレコーダを導入した数年前から特に重点的に行っています。その理由について、清水さんは「読み方をどれだけ指導しても、3カ月の研修で身につけられるスキルはたかが知れています。
 し かし、現場に出たら我々の手を離れてしまい、丁寧に指導することはできません。結局、番組についた後は、発声、発音、アクセントなどを自分で直し、自分で 上手くなっていかなくてはならないのです。そこで、研修期間は自分の声を客観的に聞く『耳を養う』ための訓練を丁寧に行っています」と話します。

[P3] 研修では、原稿を読む練習の他に、台本なしで話す「1分間フリートーク」や、屋外に出て目に映るものを描写してレポートするなど、自分の言葉で話す練習も行います。
 研修では「『4月』は頭高ではなく、尾高で読んでください」といったやりとりをするので、アナウンス技術を伝えるために共通言語を持つ必要があるからです。その他、テキストには早口言葉のような滑舌を鍛える練習文なども載っています。
  • 「自分のリズム」で話してはいけない
こうして3ヵ月の研修を終え、番組に配属されるわけですが、清水さんとしては「本当は1年ほどかけてじっくりと研修を行いたい」のだとか。ただ、現場からは「新人を使いたい」という声があり、男女問わず、早期に新人をデビューさせる傾向が強まっています。
 「アナウンサーは新人であることも価値。まだ拙く初々しい新人アナウンサーが育っていくのを視聴者の方々が楽しむ、というところもあるようです。こちらとしては『新人といえども甘えは許されない』としっかり訓練しているのですが…」。
 新人にフレッシュさを求める現場と言葉のプロとして育てたい育成担当者の間には苦しいギャップもあるようです。
では、3ヵ月の研修を終えた後、アナウンサーは現場でどのようにして学んでいくのでしょうか。現在、夕方の報道番組「Nスタ」(月~金15時50分~ 19時)のキャスターを務める入社7年目の加藤シルビアさんにお話を伺いました。
  学生時代からアナウンススクールにも通っていた加藤さんですが、研修中は特に「自分のリズム」ではなく「聞いている人にとってわかりやすいリズムで話す」ことの難しさに直面したといいます。
 「自分の節、癖というものはなかなか気づかないもの。研修の3カ月間は、その後20~30年のアナウンサー生活を続けていくために『耳を養う』ことを学んだ期間でしたね」 
 この後、加藤シルビアさんは「はなまるマーケット」や「みのもんたの朝ズバッ!」などの人気番組で脚光を浴びるようになります。現場で経験した学びの瞬間とは――。【後編】の「Reflection 中原淳の視点」もお楽しみに。
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中原淳 blog 2014年5月28日 05:55
自分の「耳」を養うのです!? : アナウンサーの「学びの現場」を取材させていただきました!

 先だって、人事専門誌「学びは現場にあり」の取材で、TBSテレビにお邪魔し、「アナウンサーの学び」について、現場の方々から、非常に興味深いお話を伺いました。この仕事は、JMAM久保田さんと、井上さんとの仕事です。
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 まずお邪魔したのは、新人アナウンサーの練習の場面です。
 つい最近、制作部からアナウンス局に異動なさった笹川友里さんが、30年のキャリアをもつベテラン・清水大輔アナウンサーに先生になってもらい、ニュース原稿を読む場面を見学させて頂きました。
 小さな小部屋の中で、新人アナウンサーの笹川さんが、ニュース原稿を読んでは、ICレコーダに記録され、その後再生。清水さんからは、「自分としてはどこが悪い」と思うか、を問われます。
「この2行(の原稿)あたりで気になるところがあったけど、どこだった自分は思う?」
 実践ーモニタリングーフィードバックを繰り返す、その様子は、非常に興味深いものでした。
 清水さんによりますと、アナウンサーの育成で、最も力を入れているのは、「発音すること」ではなく、「自分の耳を養うこと」だと言います。
 なぜなら、アナウンサーは3ヶ月後のトレーニングを経たのちは、原則としては「自分一人で、自分の発音を直し、トレーニングを積み重ねなければならないから」だそうです。要するに「自己調整学習するための感覚器を養う」ということでしょうか。
 そして、そのためには、自分の発音やアクセントを聞き取る「耳を養うこと」が大切なのだそうです。
 そのことは、その後にインタビューをさせていただいた加藤シルビアさん(現・Nスタアナウンサー)も同じようなことをおっしゃっていました。
 人には、それぞれに、自分には気づかない発音・アクセントの癖がある。そうした癖を自分で意識してなおすことが重要なのだそうです。
 練習を積み重ねることで、自分の錯誤に気づくことのできる「耳を養う」というのは、まことに興味深いメタファです。見学・ヒアリングをご許可頂いた清水さん、笹川さん、加藤さん、本当にありがとうございました。心より感謝致します。
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 その後は、人材開発部の藤田多恵さん、矢田絵里奈さんらのお招きで、「TBSテレビ新入社員研修」の最終場面、「スポットCM発表&審査会」を見学させていただきました。
 TBSテレビでは、配属直前、新人研修のフィナーレとして、30秒から1分程度のビデオ制作を新人に課しているそうです。制作にあたっての成約は「撮影1日、編集1日」。今年は、「TBSのテレビで、朝が変わる」というテーマで、新人達が6人のグループになり、30秒のスポットCMをつくったそうです。この30秒のCM発表会が、全社のしかるべき方々に審査員になってもらい、先だって、開催されていました。

 発表会では、
1.メッセージ力
2.インパクト
3.構成力(編集のテクニック力)
4.オリジナリティ
 の4つの視点で評価がなされます。4つのグループの作品ともに面白かったのですが、僕も見ていて、「たぶん、優勝はこのグループだろうな」と思った作品が賞をとりました。
 制作された、これらのCMは、社内のエレベータで流れる可能性があるのだそうです。さすがはテレビ局。
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 今日はテレビ局の人材開発のお話をしました。
 現場はまことに学びが多く、また、そこにいる人々の語りには、豊穣なメタファが含まれています。非常に興味深いことです。
 最後になりますが、今回の取材をアレンジして頂いたTBSテレビ藤田さん、矢田さんには心より感謝致します。お二人は、かつて、僕の授業の受講生でいらっしゃいました。
 帰り際、もうひとりのアラムナイであった中田奈穂子さんにもお逢いすることができました。
 アラムナイの方々が、それぞれの現場で、人材開発に携わっている様子を拝見させて頂くことは、これ以上、幸せなことはございません。ありがとうございました。心より感謝致します。
 そして人生は続く

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